【特別寄稿3】名字の読み方の違い「やまさき」「やまざき」など「連濁(れんだく)」について

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今回は第三弾の「特別寄稿」を発表いたします。
ネット上でもまことしやかに流れている名字に関する誤りの恐れある情報について、昨年より、多数のユーザー様から問い合わせをいただいたため、「特別コラム」として発表いたします。

1)今回は「なぜ、同じ名字でも読みが『濁る』ものと『濁らないもの』があるのか?」
という名字の基本に関するコラムです。

例えば「山崎」の場合、「やまさき」、「やまざき」という濁る読み方、濁らない読み方が実際に存在しますが、これは「連濁」と呼ばれる現象によるものです。

名字の研究を行うことは日本文化を視野に入れることが必要であり、奥深いものです。名字を研究する上では、「日本語(国語)」「民俗学」を踏まえた解釈が非常に重要です。これをお粗末にして名字の研究は成り立ちません。ここでは日本語の特性を踏まえた解説をいたします。

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※しかしこの後ご紹介する某テレビ番組では、某研究者より、うわべの知識のみで解説されたかのような「こじつけ」にも似た節がみられます。それについても後述します。
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「連濁」とは、「複数語(2文字以上の単語)のうち後部形成素(2個目の単語)の1拍目が清音から濁音に変わる現象のこと」を言い、 名字研究の基礎となる、民俗学や日本語(国語)なども深く学んでいれば理解しているものです。
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※「連濁とは」
【大辞林】二つの語が結合して一語をつくるとき、後ろの語の語頭の清音が濁音に変わること。「はる(春)+かすみ(霞)」が「はるがすみ」「はな(花)+ひ(火)」が「はなび」となる類。
【精選版 日本国語大事典】〘名〙 二つの語が結合して一語を作るとき、あとの語の語頭の清音が濁音に変わること。「桜・花」が「さくらばな」、「菊見・月」が「きくみづき」、「経・済」が「けいざい」となる類。連濁音。
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2)「なぜ『やまさき』と『やまざき』の読みがあるのか?(連濁)」についてもう少し詳しく説明する前に、日本の名字研究の歴史について、触れる必要があります。

国内には地道な研究を日々行い優秀な研究家が数多存在します。そのなかでも名字や系図関連本を150冊以上出版した「丹羽基二」氏が有名です。名字研究の第一人者とよばれる所以は、日本民俗学の確立と研究の普及に努めた「柳田国男」の弟子であり、 師より、民俗学を踏まえた日本の名字研究を専門的に行うよう促され、昭和期に研究を始めるに至ったことにあります。

更に同時に日本名字研究の祖とも呼ばれ、国内の墓石をひとつひとつ足で歩き、国内名字研究の大著「姓氏家系大辞典 全三冊」を仕上げた「太田亮」氏にも師事していたことが「丹羽基二」氏の研究を後押ししました。

昭和、平成に渡り「名字・家系学」を地道に研究し、自らの足で猟歩し研究した成果は150冊以上にわたる膨大な名字、家系、系図といった専門書を世に送り出すに至りました。

3)さて、ここからが今回のコラムの本題ですが、「丹羽基二」氏は日本の名字の成り立ちについても「柳田国男」を正式に師にもつことにより「民俗学」をよく理解していました。
併せて、名字研究の基礎についても「太田亮」氏を師にもつことで名字のことをよく理解していました。


「丹羽基二」氏は今回のテーマとなっている名字の読みの濁音については、あたりまえに知っており、
「日本語には古来より『連濁』というものが存在する。」としています。

つまり、名字にもあてはまり、「山崎」の場合、「やまさき」が古く、「やまざき」は連濁を起こした「新しい読み」ということになるのです。
端的にお伝えするのであれば、「山崎の『さき』と『ざき』」、は、連濁を起こしている現象です。

地名、名字ともに、西日本のほうは歴史が古いため、西日本では全般的に清音を使用し、一方、関東などの東国は歴史が新しいため地名、名字ともに連濁を起こしているものが多い、というのが単純な法則です。

民俗学や日本語(国語)を踏まえるという点は、日本の名字・家系図研究の世界では基礎となるものです。150冊以上の専門書の出版以外にも、この点が信頼できる研究家として長年活躍された理由のひとつかもしれません。

以下は、某テレビ番組でのやりとりと、それに対する正しい解説です。
某研究者が上記を知らなかったような回答を行ってしまったために、問い合わせを多く頂戴するに至りました。名字研究の立場から、正しい情報をお伝えしなければなりません。

某テレビ番組で放映された内容については、参考までに、下記のサイト「ツキをよぶ美しい文字」より一部参考引用させていただいております。
https://bimoji.at.webry.info/201710/article_6.html

上記サイトで引用・記載されている内容は「日本人の名字に関する某番組の中(2017年10月5日放送)」で研究者により回答されたものと推察します。
※2019年2月時点。動画サイト等で過去の番組が見られる場合もあるようです。


「山崎」「高田」「五十嵐」といった名字について「なぜ同じ名字で濁る読みと濁らない読みがあるのか?」という設問に対して、テレビ番組内で某研究者が回答した内容が引用されています。

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>日本人の名字で、同じ漢字なのに読み方が2種類ある場合、「どっちかな?」と迷うことありませんか。間違った読み方をして訂正されると、 何となくきまり悪いような…。逆に1つの名字で、何種類かの漢字が該当する名字もあります。そんな中から名字研究家・(研究家名前)先生がルーツ等を教えてくれました。

≪濁る・濁らない≫~境界を調べると (図1)参照
*山崎(山﨑)
・やまざき~札幌98% 東京98% 名古屋96% 大阪66%
・やまさき~広島96% 高松100% 福岡90% 鹿児島95%

研究家名前:姫路市あたりを境に、ガラッと変わります。

*高田(髙田)
・たかだ~札幌99% 東京97% 名古屋95% 大阪93% 高松100% 鹿児島91%
・たかた~広島82% 福岡53%

研究家名前:広島に多いのは、かつて高田郡(たかたぐん)という地名があったので、高田=たかたが一般的らしい。
因みに元ジャパネットタカタの髙田明さんは、広島県安芸高田(たかた)市の出身です。

*五十嵐~いがらし&いからし
研究家名前:東北の方言の発音は、聞く方が「いからし→いがらし」と濁って聞こえるので、「いがらし」が増えていったようです。東日本で濁点の付く名字が多く、西日本ではつかない場合が多いです。
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しかし、この研究家による回答は、おそらく名字の成り立ちの基礎を知らない恐れのある発言と思われます。

このテレビ番組で放映された特にこの部分
「広島に多いのは、かつて高田郡(たかたぐん)という地名があったので、高田=たかたが一般的らしい。」「東北の方言の発音は、聞く方が「いからし→いがらし」と濁って聞こえるので、「いがらし」が増えていったようです。東日本で濁点の付く名字が多く、西日本ではつかない場合が多いです。」は
「根拠がうすく不十分な説明」ということがおわかりになるかとおもいます。

「連濁の法則」にはまったく触れておらず、また、東北の方言にこじつけたような解説を行うなど、誤解を招くような表現がなされています。

丹羽基二氏の地道な研究や「柳田国男」「太田亮」といった一級の専門家より連綿と続く研究をしらずして、氏の研究した成果や本を元に、まるで自分が研究したかのように盗用し、出版されている事象を丹羽氏は生前、憤っていました。しいては、その間違った説や誤報を聞いた日本国民の多くが、真実と誤解し間違った理解の道へ向かってしまうことを丹羽基二氏は恐れてもいました。

4)名字の世界は深く、まだまだ知られていない研究成果も多数あります。

名字由来netの基本理念は「日本の系譜や姓氏・家系などの調査研究により人類学・歴史学の基盤の一つをなす地域や郷土の歴史や先達の優れた学業を知り、高尚かつ健全な日本人の名字・由来・家系図の普及と復興に関する活動を行い、日本人の社会文化活動の発展に寄与する。」です。
全国に存在する地道な研究をされている多くの専門家をサポートし、大切な文化でもある名字や系図を250年後の日本人(子孫)に正確に伝えていきたいと考えています。

5)昨年から、当ユーザーの問い合わせも多く、
「テレビなどで伝えている研究家のあいまいな説では不可解であり根拠がうすいのでは?」との指摘を多数うけたため、第三弾の『特別寄稿3』を発表させていただきました。

※第一弾「特別寄稿:【蛍原】の名字由来について」、
第二弾「特別寄稿2:『日本人の名字30万種類』という説は本当か?」はこちらをご覧ください。

今後も名字に関しての誤りの恐れある情報や疑問などございましたら、お気軽にお問い合せください。
機会があれば、コラムとして掲載させていただきます。

※当コラムは名字に関する番組を否定するものではなく、誤解されかねない情報で解説を行う研究家の発言を危惧し、正しい「連濁」の解説を行うことを目的としたものです。


参考:
※「民俗学」とは民間伝承を素材として、民族文化を明らかにしようとする学問。日本では柳田国男・折口信夫らにより基礎づけられた(大辞林)

参考サイト:
https://bimoji.at.webry.info/201710/article_6.html

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